「福祉車両=介護用の車」というイメージを持つ方は多いですが、福祉車両は一般ユーザーでも購入可能です。近年では、アウトドアや趣味の用途、さらにはバイクトランポとして利用するケースも増えてきています。
特にスロープタイプやリフトタイプの福祉車両は、車いすだけでなくバイクや自転車、キャンプ道具など大きな荷物を積み込みやすい構造が魅力です。さらに普段使いもしやすいため、「遊びも日常も両立できる車」として注目を集めています。
本記事では、福祉車両の意外な活用方法やメリット、購入時の注意点について解説します。バイクトランポやアウトドアに適した車を探している方は、ぜひ参考にしてください。
本記事は、福祉車両専門店「福祉カー.jp」を運営する株式会社 共立自動車のスタッフが執筆・監修しています。
担当スタッフは福祉車輛取扱士の資格を保有しており、日頃から福祉車両の専門家として、販売・整備・ご相談対応などを行っています。現場での豊富な経験と知識をもとに、正確かつ実用的な情報をお届けします。
福祉車両の専門店 福祉カー.jp / 株式会社 共立自動車
福祉車両は一般ユーザーも購入可能!

「福祉車両=介護用の特別な車」と思われがちですが、実は福祉車両は誰でも購入できます。介護や送迎だけでなく、趣味や仕事など幅広い用途で使えるのも魅力です。ここでは、一般ユーザーが福祉車両を購入する際に知っておきたいポイントを解説します。
誰でも購入できる!ディーラーや中古車販売店での購入も
福祉車両は新車の場合、トヨタやホンダといったメーカー系ディーラーでも注文可能です。ただし、多くの営業スタッフは通常の乗用車の販売が中心であり、福祉車両についての知識や取扱経験が十分でないケースもあります。そのため、ディーラーでは細かい装備や使い勝手について相談したい方には少し物足りなさを感じるかもしれません。
新車購入も福祉車両専門店での購入がおすすめ
一方で、福祉車両を専門に扱う販売店であれば、実際の利用シーンに基づいたアドバイスを受けられます。例えば「どのスロープならバイクを載せやすいか」「大型のキャンプ用品を積む場合に向いた仕様はどれか」といった相談も可能です。新車の注文も専門店を通じて行えるため、福祉車両の知識があるスタッフと一緒に選ぶことで失敗のない買い物ができます。
中古車も狙い目!専門店が在庫車豊富
中古市場でも福祉車両は流通していますが、一般の中古車販売店では在庫が限られていることが多いです。福祉車両の専門店なら種類や装備の違いを比較しやすく、実際に現車を見ながら検討できるのが強みです。趣味用途で「スロープタイプ」「リフトタイプ」などの福祉車両を探す方には特におすすめです。
なお、来店の際には利用目的をあらかじめ伝えることで、スタッフが最適な福祉車両を提案してくれます。初めて福祉車両を検討する方こそ、専門店での相談がおすすめです。
福祉車両の特徴は?

福祉車両は、もともと車いすを利用する方や体に不自由のある方が安全・快適に移動できるように設計された車です。スロープやリフトといった特別な装備は、本来「どのような方でも安全に安心して車を利用できる」ことを目的としています。
ただ、その構造を活かすことで、介護用途に限らず幅広いシーンで便利に使えるのも大きな特徴です。ここでは、一般ユーザーが知っておきたい福祉車両の特徴を紹介します。
スロープ・リフトタイプなど種類がある

一般ユーザーが選びやすい福祉車両には大きく分けて「スロープタイプ」と「リフトタイプ」があります。
- スロープタイプ:車両後部にスロープを展開し、車いすや荷物をそのまま積み込めるタイプ。軽自動車やミニバンで多く採用されています。スロープには勾配があるため、電動ウインチが搭載されているとより小さい力で乗降車させることができます。
- リフトタイプ:電動リフトで持ち上げて車内に収容する仕組み。重量のある電動車いすや大型荷物に対応できます。
スロープ付きで大きな荷物も楽に積載可能!

本来は車いすの乗降を助けるためのスロープですが、この装置を応用すると大型の荷物を持ち上げることなく積み込めます。例えば、バイク、自転車、キャンプ道具などをスムーズに積み込めるのは福祉車両ならではのメリットです。

また、車によってはスロープ展開時に自動的に車高が下がって乗降しやすくなったり、電動ウインチで乗降を補助してくれたりする機能も搭載されています。福祉車両の種類についてより詳しく知りたい方は、ぜひ下記記事も合わせてご覧ください。
フラットな床で積載性抜群

多くの福祉車両は、車いすを安全に固定するために床面がフラットに設計されています。そのため、荷物を無駄なく積載でき、固定もしやすいのが特徴です。アウトドアや仕事で「荷物を多く積みたい方」にとっても大きな魅力になります。
また、車いすを固定するための装置も装着されている場合が多く、これを工夫して使用することで積載物の固定にも応用できます。
普段使いとの両立も

福祉車両は「特別なクルマ」と思われがちですが、基本的な走行性能や使い勝手は通常の車と変わりません。後部座席を起こせば一般的な乗用車と同じように使え、日常の買い物や送迎も問題なくこなすことができます。
また、福祉車両はスロープやリフト以外にも手すりが多く装着されていたり、乗降車しやすいステップになっていたりすることもあります。そのため、お年寄りや小さなお子様からすると通常の車よりも乗降車しやすく快適に利用できる場面も多いでしょう。つまり福祉車両は、介護だけでなく幅広い人にとって「使いやすい車」だといえます。
福祉車両をバイクトランポに使える?

福祉車両は本来、車いすの方が快適に移動できるように設計されたクルマですが、その構造を活かして「バイクトランポ」としても活用しているユーザーもいます。特にスロープタイプやリフトタイプは、大型の荷物を積みやすい点でバイクやアウトドアユーザーからも注目されています。ここでは、バイクトランポとして福祉車両を利用する際のメリットや注意点を解説します。
福祉車両をバイクトランポにするメリット

福祉車両をバイクトランポとして使用する場合のメリットを紹介します。
バイクの積み下ろしが楽

福祉車両のスロープはバイクを通常の車に積み降ろしする際に使用するスロープよりも幅広で、車種によっては車高が下がるのでバイクの積み降ろしが非常に楽になります。
通常の車をバイクトランポとして利用する場合はスロープの付け外しを行う必要があります。しかし、福祉車両のスロープは車両に格納して収納できるのでスロープを準備する手間もかかりません。
フラットな床や固定装置を使用して安定した車載が可能

福祉車両は車いすの方が車いすに乗ったまま乗車できるように床面がフラットになっています。また、乗車中に車いすが動いてしまうのを防止するために、電動ウインチや車いす固定装置が装備されています。
通常、バイクを車載したときにはラッシングベルトで固定することになりますが、これらを併用することでバイクをより安定して固定することができます。
普段のバイクライフにも活用可能
バイクトランポとして使える車が1台あれば、車検や修理などの時も天気や代車、帰りの足を考えなくてよくなります。また、普段バイクを屋外保管している場合、台風や強風などの悪天候が気になる方も多いかと思いますが、そのようなときは車内に保管できると安心です。
バイクトランポにおすすめの福祉車両
バイクトランポとして使用するのに、おすすめの車種を紹介します。
ノア・ヴォクシー スロープ タイプ1

ノア・ヴォクシーのスロープタイプの福祉車両には、ニールダウンと呼ばれる車高調整装置が搭載されておりスロープ使用時に車高が下がることで、スロープの勾配が緩やかになります。また、スロープ自体の幅も車いすが乗降できる幅があるのでバイクの乗降車と考えると非常に余裕をもって乗降車させることができます。

ノア・ヴォクシーの福祉車両は数種類ありますが、バイクトランポとして使用する場合には2列目席助手席側がフラットになるタイプ1と呼ばれる種類の車両がおすすめです。
軽バン スロープタイプ

ハイゼットカーゴやエブリイなどの軽バンタイプのスロープ福祉車両は、車高が高く車内を広々使うことができます。幅広のスロープを使ってバイクを車載した後は、各所に手すりやフックを引っかけやすい場所があるのでラッシングベルトを使ってバイクを固定できます。
ハイエース/キャラバン リアリフト仕様車

バイクの他、多くの荷物を積載したい場合にはハイエース/キャラバンのリアリフト仕様の福祉車両がおすすめです。ハイエース・キャラバンのリフトは電動仕様になっており、ボタン一つでバイクを乗降車させることができます。
リフトのサイズ的にそのままバイクを載せることはできないので、別途バイクの後輪が落ちないようにするための板や短いスロープを併用することとなります。
バイクトランポとして福祉車両を使用するときの注意点
福祉車両をバイクトランポとして使用する場合の代表的な注意点について解説します。
保証修理対象外となる場合がある
福祉車両の各装置をバイクトランポ等の想定外の用途で使用して故障した場合、修理保証の対象外となる場合があります。また、耐荷重を超える重量でスロープやリフトを使用した場合、故障リスクも増大するので注意しましょう。
一般的なスロープ・リフトの耐荷重は200kg程度

福祉車両をバイクトランポとして使用する場合、バイクを乗降車させる際にスロープやリフトにかかる荷重が耐荷重を超えないようにすることが重要です。一般的な福祉車両のスロープ・リフトは耐荷重が200kgとされています。
そのため、バイクの重量もそれを超えないように使用することが重要となります。また、バイク乗降車時に人も一緒にスロープやリフトに乗る場合その重量も加味して考える必要があります。
車内での固定方法は工夫が必要
バイクを車載した後は、運転中にバイクが転倒しないように固定する必要があります。バイクのサイドスタンドやセンタースタンドを立てるだけでは不十分なため、ラッシングベルトなどを使用して車を運転中バイクが転倒したり動いたりすることがないようにして固定する必要があります。
福祉車両には車いすを固定するための固定装置や電動ウインチが搭載されており、こちらを工夫することでバイクの固定に使用できますが、これだけでは不十分です。
座席を取り外したら構造変更が必要
バイクトランポとして福祉車両を使用する場合、後席シートが不要となる場合があります。この時、後席シートを取り外してしまうと、車検証上の乗車定員より実際に乗車できる人数が減少してしまうので構造変更と呼ばれる手続きが必要となります。
構造変更を行わずに座席を取り外した状態では車検に適合しなくなりますので、座席を取り外すことが前提の場合には購入時に構造変更も同時にできないか確認してみましょう。
アウトドア・レジャーでも福祉車両は便利!

福祉車両は本来、車いすの方や体に不自由のある方が安心して移動できるように設計されています。しかし、その特徴を活かせばアウトドアやレジャー用途、日常生活でも大活躍します。
スロープやリフト、大きく開くバックドア、フラットな床は「大きな荷物を積む」シーンに非常に便利です。キャンプや自転車、カヤックといった趣味だけでなく、雪国の方であれば「除雪機」の積載にも向いています。
キャンプ道具も楽々積載!

テントやタープ、チェア、テーブルといったキャンプ道具は、意外と長さや幅があり一般的なミニバンやSUVでは積み込みに苦労することもあります。

福祉車両のスロープタイプであれば、地面からそのままスロープで積み込めるため、大きなクーラーボックスやキャリーワゴンなども楽に載せられます。

また、積み下ろしが楽になることで、荷物の出し入れにかかる体力や時間を節約できる点も魅力です。特にキャリーワゴンを使用してキャンプ道具の運搬をしている場合には、そのままスロープを使って車の中に積載できるので非常に便利です。
フラットな床で自転車や除雪機も車載しやすい

福祉車両は車いすが安定して乗れるように床面がフラットに作られているため、自転車やカヤックのように長さがある荷物も積みやすい構造になっています。さらに、車いす固定用のフックや電動ウインチを工夫すれば、荷物を安定させて固定できるのもメリットの一つだといえます。

雪国では一般家庭に小型の除雪機がある場合も少なくありません。冬に必需品となる小型の除雪機もスロープを使って安全に積み込みができるため、レジャーだけでなく日常生活の頼れる相棒としても活用できます。
一般ユーザーが福祉車両を買う時の注意点

福祉車両は一般のユーザーでも購入・使用できますが、本来は介護や送迎のために設計されたクルマです。そのため、本記事で紹介したような、一般ユーザーの方が福祉車両を購入して、バイクトランポや趣味に活用する際にはいくつかの注意点を理解しておくことが大切です。
助成金や補助金は対象外の可能性もあり
福祉車両の購入にあたっては、市区町村や自治体から助成金・補助金を受けられる場合があります。しかしこれは基本的に、介護や福祉目的で利用する場合が対象となります。条件として福祉車両の所有者(市町村によっては使用者)の障害者手帳の提出などがあります。
バイクトランポやアウトドアといった一般ユーザー用途では対象外となる可能性が高いので、購入前に制度の内容を確認しておきましょう。助成を前提に予算を組むと、後で想定外の出費になることもあります。
乗車定員に注意
福祉車両は床を低くしたりスロープを備えたりする関係で、通常の同型車と比べて乗車定員が減っているケースがあります。たとえば通常8人乗りのミニバンが、福祉車両仕様では5人や6人乗りになっている場合もあります。アウトドアや日常用途で家族や仲間と一緒に乗ることを想定している方は、必ず定員数を確認してから選びましょう。
また、車検証上の乗車定員に問題がなくても実際にスロープを使用する場合には、後部座席を格納する必要があり、乗車定員が少なくなる車も多くあります。実際にその車を使用する場面を想像して購入前に実車を確認してみるようにしましょう。
電動ウインチの有無をチェック

スロープタイプの福祉車両の多くには、車いすの方を安全に乗降車させるための「電動ウインチ」が装備されています。これはクーラーボックスの積載、キャリーワゴンなど重量のある荷物を積む際にも役立ちますが、グレードや仕様によっては付いていない場合があります。
ウインチがないと手作業で積み込む必要があり、荷物の重さによっては大きな負担になります。中古車を検討する場合は特に、使用用途に合わせて、ウインチの有無を必ず確認しておきましょう。
まとめ

もともと福祉車両は、車いすの方や体に不自由のある方が安心して快適に移動できるように設計された車です。しかし、スロープやリフト、フラットな床といった特徴を活かせば、バイクトランポやアウトドア・レジャー用途、日常生活の荷物運搬などにも便利に活用できるという大きな魅力があります。
一方で、一般ユーザーがそのような目的で福祉車両を購入する場合には、助成金や減免制度の対象外になる可能性や、乗車定員が減ってしまうこと、電動ウインチの有無といった注意点もあるため、購入の際にはしっかり現車を確認することが大切です。
弊社では、福祉車両の豊富な取り扱い実績を活かし、お客様のライフスタイルや用途に合った最適な1台を一緒に探すお手伝いをしています。バイクトランポやキャンプ用途で福祉車両に興味がある方も、ぜひお気軽にご相談ください。下記のリンクから気軽に在庫車検索やWeb問い合わせを行うことができます。